週末デッドエンド

勉強と日記と怪文書

2021-10-29 Fri. — 数理論理学のためのテキストやウェブサイトを紹介する記事。

日記

断酒100日目。人生の間で100日間も酒を飲まなかった時期はなかったと思う。自分はすごいことをやってのけた。

今日も睡眠に成功した。

数理論理学のテキストをいろいろ調べた。

普遍代数学を勉強していたのだが、厳密な取り扱いをするためには集合論や数理論理学の初歩というか常識を身に着けておきたいと思い、ネットで情報を集めていた。

古典的名著として、 Shoenfield の "Mathematical Logic" や Ebbinghaus, Flum & Thomas の "Mathematical Logic", さらに Enderton の "A Mathematical Introduction to Logic" が各所で紹介されていたが、目次や最初の数ページを眺めるととても最初に読む一冊ではなく、論理学を志す学生が誰かに指導を受けた上で読み進めるような本だった。

あと大学の図書館で少し読んで挫折した van Dalen の "Logic and Structure" ももう一度眺めたが、今読み返すとこれもはじめの一冊ではなかった。論理学とは論理について論理的に議論する学問なので、形式的に扱う記号である  \to と、説明のために使われるメタ言語である  \Rightarrow を区別する必要があるのだが、そういうことは常識として特に注意することなく使い分けられているので、初学者は混乱すると思う。

他にも数え切れないほどテキストがあってどれにしていいのか迷った。あと、論理学の分野は意外と日本語の教科書が豊富にあることを知った。そのうち購入したい。

ともかく、調べてみると参考になりそうなサイトが見つかったので2つ記録しておく。

Open Logic Project

論理学のオープンソース化という遠大な目標を掲げたサイトを見つけた。

openlogicproject.org

このサイトの "Download" のページから1000ページ近い集合論と論理学のテキストが入手できる。論理学のプロフェッショナルが分担して執筆している模様で、内容も彼ら・彼女らの専門と思われる発展的内容が豊富だったが、集合論や命題論理の初歩的な部分については必要最低限のことだけが書いてあるように思う。論理学の章のはじめのほうにも、「定義が述べてあるだけなので今後例を追加していく予定」というようなことが書いてあった。大学院の授業で使う部分などから少しずつ執筆しているのだろう。少なくとも現状では素人がこれで自習できるような感じではなかった。

Logic Matters

もうひとつは Peter Smith という論理学者のサイト。

www.logicmatters.net

彼の "An Introduction to Formal Logic" というテキストが公開されている。日常的な感覚でわかる論理から入門して徐々に形式的な論理学に誘導していくというスタイルの本。最初の数ページを眺めてあとは興味のあるところを何ページか読んだのだが、とても面白そうだった。日本語だったらもしかしたら読んでいたと思うが、英語で400ページくらいあるので通読するのはやめた。英語自体は平易で読みやすい。高校生くらいの時期に出会ってみたかった。

このサイトには "Teach Yourself Logic" という、論理学の勉強のためのガイドがあり、論理学の勉強の仕方やテキストの書評が詳細に載っている。自分が眺めたことのある van Dalen や Shoenfield, Ebbinghaus らのテキストの書評が自分の感想とだいたい一致していたので、参考になりそう。あと批評が正直で面白い。

例えば Kossak の "Mathematical Logic" の書評では、 "I’d worry that someone who wrote that is hopelessly confused between numerals (expressions which represent) and numbers (what the numerals represent)." (訳: この本の著者は数字(数を表すための表現)と数(数字が表しているもの)を絶望的なまでに混同しているのではないかと心配になる) と辛口で批判している。

そんな中、 Chiswell & Hodges の "Mathematical Logic" は入門的教科書として好意的に評価されていたので、これを読んでみることにした。比較的新しい教科書で、それほど分厚くなさそう。イントロを見てみると、私が挫折した van Dalen の "Logic and Structure" の講義ノートを下地にしたうえで、初学者にもわかりやすく書かれているようだった。